奥深いコクがその辛さを支え、単なる「辛い」だけで終わらせない構成力が感じられる。西安刀削麺 曙橋店の辛いマーラー刀削麺1,000円

水曜日の11:30。曙橋で打ち合わせが終わり、早めの昼食のため店を探す。駅から少し離れた刀削麺屋へ。

お客さんは1人。店内は狭い。テーブル同士が近く、人が1人ようやく通れるくらいの間隔。

メニューは2枚あるが、同じ様な書き方で迷う。適当に「本場辛いマーラー刀削麺」にした。

注文してから4分7秒で運ばれてくる。空いているからか、早い。待っている間にお客さんが来て、既に6人になっている。

個人的評価点数

器の中に広がる赤の濃淡が、一目で本場の辛さを物語っている。マーラー刀削麺の鮮烈な印象が視覚から嗅覚へ、そして味覚への期待感を高めるである。

スープの表面には、辣油が織りなす艶やかな膜が光り、その下には旨味とスパイスが溶け込んだ黄金の液体が隠れている。

まず目に飛び込むのは、盛られた挽肉の存在感である。赤みを帯びた香ばしい挽肉は、ただの添え物ではない。

肉そのものにスパイスの香りが深く染み込み、ひと口運べば、その旨味が舌の上で花開くのだ。さらに、その隣には緑のインゲン豆が彩りを添え、瑞々しい歯応えがアクセントとなる。

そして、麺である。刀削麺特有の厚みと幅が、この一杯を特別なものにしている。手作業で削り落とされた麺は、形が不揃いであるがゆえに、スープをしっかりと絡め取るのだ。

もちもちとした食感は、噛むたびに小麦の香りを放ち、辛さと調和する。

スープを口に運ぶと、その辛さは鋭いが決して刺々しくない。むしろ、麻のしびれるような感覚と辣の熱が見事にバランスを取り、次のひと口を求める欲をかき立てる。

奥深いコクがその辛さを支え、単なる「辛い」だけで終わらせない構成力が感じられる。

香りのアクセントとなるのが、パクチーである。その青々とした爽やかな香りは、スープの重厚さを軽やかに引き締め、全体に一層の奥行きを与える。

箸を進めるたびに香りが鼻腔をくすぐり、気がつけばスープを一滴残らず飲み干している自分に気付く。

さらなる感動を与えるのが、店の心遣いである。料理が運ばれる際にさりげなく手渡される紙エプロンは、客の食事体験への配慮そのものだ。

辛味が跳ねても気にすることなく食べ進められる安心感が、料理の美味しさを何倍にも増幅させる。

この一杯は、ただの食事ではない。本場の味を追求する職人の技と、細部にまで行き届いた心遣いが凝縮された、まさに「食の芸術」である。

一度味わえば、その記憶は舌だけでなく心にも深く刻まれるだろう。食べに行く価値がある、それ以上の価値を提供する一皿である。

お店の詳細

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